モノ好キ 読ミモノ

Literature

メン田ヘラ子ちゃん

ヘラ子ちゃんは今日もひとりでシクシクと泣いています。理由は元カレのヨワシくんに送りつけた50件あまりのLINEがいつまで経っても既読にならないからです。

心配して声をかけてくれた優しいお友達もたくさんいました。でも「どうしたの?」「大丈夫?」というみんなからの優しい問いかけに対していつもヘラ子ちゃんは、「良いんで、どうせワタシが悪いんで」としか答えてくれません。

せっかく心配して声をかけてくれた優しいお友達も、こんなことが毎週のように続くと次第にヘラ子ちゃんと距離を置くようになりました。でもヘラ子ちゃんはそんなこと一切気にしません。どんなに友達が減ろうがどんなに陰口を言われようがヘラ子ちゃんは全然気にしないのです。とにかくヨワシくんからLINEの返信さえ来ればそれで良いのです。

ヘラ子ちゃんはみんなから精神的に弱いと思われがちですが、実際は自分に関係する、自分が好意を持つ人物に対してのみ精神的弱さを発揮するだけであって、その他の自分に無関係の奴が何をとやかく言おうが、ヘラ子ちゃんは全然へっちゃらなのです。そういう意味ではヘラ子ちゃんはとっても強いのです。ヘラ子ちゃんは芸術やアートに造詣が深く、日本の音楽も大好きです。あいみょんや鬼束ちひろなど女心を歌う女性シンガーの曲を寝る前に泣きながら聴くのです。

そんなヘラ子ちゃんのところに、この町で一番のデリカシーなしのツヨシくんがやって来ました。
「よお、ヘラ子! また泣いてんのか! うんこでも漏らしたのかよ?」
頭は小学生のまま体だけが成長してしまったようなツヨシくんは、相手が女の子だろうが容赦なくデリカシーのない言葉を浴びせてきます。それが彼なりのコミュニケーションなのです。
ツヨシくんはヘラ子ちゃんが目に涙を浮かべていても全く心配する様子もなく、自分の喋りたいことを至近距離で割と大きめの声でヘラ子ちゃんに話し始めました。
「俺よぉ駅前のスーパーでアルバイト始めたんだけどよぉゴミ箱によぉ壊れたバーコードを読み取る機械が捨ててあったからよぉ持って帰ってきちゃったんだよぉ!」
ツヨシくんは壊れたバーコードスキャナーをヌンチャクのようにビュンビュンと振り回しながら、ヘラ子ちゃんを敵に見立てて当たらないように攻撃し始めました。
ツヨシくんが「アチョーッ!」と叫んでも、ヘラ子ちゃんは全然乗ってきてはくれませんでした。
すると、ツヨシくんが言いました。
「おい、ヘラ子! ちょっと袖口まくってみろよ!」
ヘラ子ちゃんは言われるがまま洋服の左手の袖口をまくると、手首には無数のためらいキズがありました。
それを見たツヨシくんは、壊れたバーコードスキャナーをためらいキズの部分にあてがいました。
「・・・ピッ」
ヘラ子ちゃんは小声で言いました。

ツヨシくんとヘラ子ちゃんは仲良しなのです。

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